お店で、だれやみ。【The-Bar-Sazerac】

―こちらの焼酎に描かれているのは、猪ですか？

宮崎県西部の小林市須木に蔵元のすき酒造さんがありまして、「山猪」と呼ばれる須木の猪が描かれているようです。緑と水に囲まれた自然豊かな場所で、山猪はその山々を駆け巡るからか飛び抜けた速さと体躯を持っているのだとか。この「赤山猪」も、まるで山猪が猪突猛進するように力強く濃厚で、コクと旨味を感じる芋焼酎です。

―赤山猪に加えたのが、最近話題のビターリキュール「スカーレット」と北海道・紅櫻蒸溜所の「ベルモット851」。面白い組み合わせですね。

ライウイスキーとドライベルモット、カンパリ（※）をステアして作るクラシックカクテルの「オールドパル」を土台に創作しました。いずれも欧州のお酒ですが、日本で造られる焼酎に加えるなら国産のベルモットとビターリキュールを使おうと思いまして。近年、新しい蒸溜所や醸造所が増えていて、スカーレットもベルモット851も誕生したばかり。オールドパルは“古い仲間”の意味ですが、焼酎と合わせる“新しい仲間”として「ニューパルズ」と名付けました。さらに牛蒡を浸けたウォッカを少量入れて、芋の風味にも繋がる大地の香りと深みを与えています。

※ライウイスキー
原料の51％以上にライ麦を使用したウイスキー。華やかな香りとスパイシーな味わいを持つ。
ドライベルモット
ベルモットは、白ワインをベースに香草・薬草類や糖分などを加えて造られるフレーバードワイン。ドライベルモットは辛口で、かつてフランスでは辛口、イタリアでは甘口のべルモットが造られていた。
カンパリ
イタリアを代表するビターリキュール。

―焼酎に合う“新しい仲間”、探してみるとたくさんあるかもしれません。

和の素材はもちろん相性が良いでしょうし、テキーラやメスカルも少量加えれば味わいに厚みが出るのではないでしょうか。それから当店の新メニューとして明太子、茗荷、卵を使ったビスマルク風のピザを作りましたので、ニューパルズと共に召し上がってみてください。赤山猪のコクと、明太子の塩味がマッチします。

―次のカクテルに使われるのは「麦山猪」、こちらは麦焼酎ですか。

やさしい麦の香りと、ライトな味わいを持つ麦焼酎です。宮崎県は柚子の生産地として知られていて、クラフトジンのボタニカルにも使われていることから自家製の柚子ジャムを合わせてみました。それに蜂蜜と水を１：１で加熱して混ぜたハニーウォーターや卵白を加えて、柔らかい口当たりのサワーカクテルにしています。親しみのある組み合わせでお客さまがオーダーしやすいよう、カクテル名は「柚子ハチミツ レモンサワー」にしました。居酒屋ですとレモンサワーはロングカクテルですが、バーならではのショートスタイルで。

―山下さんはもともと料理人を目指されていたこともあって、自家製のバーフードを出されていますよね。

こちらのレモンサワーでしたら、パウンドケーキをペアリングにお勧めします。甘さ控えめに作ってありますので、柚子の風味に合うと思いますよ。麦山猪はコーヒーと甘味を加えたカクテルにしても美味しいでしょうし、ウイスキーベースの「サゼラック」や「オールドファッションド」（※2）にアレンジしても面白そうです。赤山猪は、テキーラのように塩やライムを添えたショットスタイルで試してみたいですね。

※2　サゼラック
ウイスキーをベースに角砂糖、ビターズ、アブサンを少量加えてステアするカクテル。
オールドファッションド
ウイスキーをベースに角砂糖とビターズを加えて、オレンジやチェリーなどのフルーツを添えるカクテル。

―カクテルのベースに使ってみたい焼酎はありますか？

いま、焼酎の蔵元さんがクラフトジンを造られていますよね。ジンといえばトニックウォーターで割ったジントニックが人気ですが、焼酎もトニックウォーターで割るだけで美味しいものがあるといいなと思います。お湯割りやソーダ割り、ロックだけでなく、トニックウォーターも焼酎の割り材として使えるのではないでしょうか。今回のイベントを通じて焼酎カクテルに興味を持たれたり、カクテルのベースに使用した焼酎を気に入ってくださった方もいらっしゃいます。宮崎県ご出身のお客さまも見えて、私自身もこれまであまり取り扱ってこなかった焼酎と向き合うことができました。これを機に、さまざまな銘柄を試しながら焼酎を学んでいきたいです。

カクテル①
ニューパルズ　　New Pals

ベースの焼酎：芋焼酎（赤山猪／すき酒造株式会社）

材料

• 赤山猪　20ml
• スカーレット　20ml
• ベルモット851　20ml
• 牛蒡ウォッカ（自家製）　5ml

作り方

1. 材料をステアして、氷を入れたロックグラスに注ぐ。